なぜ近縁の種は餌が違うのか?
Kishi, S & Tsubaki, Y. (2014) Avoidance of reproductive interference causes resource partitioning in bean beetle females. Population Ecology 56(1):73-80.
ヨツモンマメゾウムシのメスに求愛するアズキゾウムシのオス
野外ではしばしば近縁種間で餌が異なっています.これは資源分割とよばれています.従来の理論では,資源競争を回避するために異なる資源を利用するよう進化した結果,資源分割が生じると考えられてきました.しかし,この仮説を支持する経験的証拠はほとんどありません.本論文では,繁殖干渉が資源分割の重要な要因になることを実験的に確かめています.繁殖干渉とは種間の性的相互作用によって起きる負の効果のことです.
実験には2種の近縁なマメゾウムシと形の異なる2タイプのアズキ豆を用いました.アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシはともに幼虫のエサ資源としてアズキを利用します.資源をめぐる競争ではヨツモンが強く,繁殖干渉はアズキゾウの方が強いことが分かっています.割ったアズキと丸いままのアズキをシャーレのなかに分けて入れ,そこへ2種のマメゾウムシを入れて産卵させました.その結果,次世代には割ったアズキからはアズキゾウが多く羽化し,丸いアズキからはヨツモンが多く羽化しました.
資源分割が起きた原因を調べるために,シャーレに入れる2種のオスとメスの組み合わせをさまざまに変えてみました.その結果,アズキゾウのメスは異種オスがいてもアズキのタイプをあまり区別しませんでした.しかしヨツモンのメスは異種オスがいるとき丸いアズキにより多く産卵しました.ヨツモンのメスは異種オスからのハラスメントを避けるためにすき間の多い丸いアズキを選んだようです.つまり,資源分割の原因は,ヨツモンのメスの行動変化でした.繁殖干渉があるときには,これまでの理論が想定していた「進化」のプロセスがなくても,資源分割が起こりうるというわけです.