シカや家畜が昆虫に与える影響の強さは何で決まるか

Takagi S. & Miyashita T. (2014) Scale and system dependencies of indirect effects of large herbivores on phytophagous insects: a meta-analysis. Population Ecology, Online early publication

シカや家畜など大型草食獣の採食は、植物や動物に対して直接的・間接的に大きな影響をもたらします。中でも植食性昆虫は植物の密度や形質の変化を介した影響を受けやすく、様々な生態系における研究事例が蓄積されています。しかし、昆虫に対し正にも負にも影響する間接効果の一般的な傾向は整理されておらず、影響の予測が難しいという課題が残っていました。今回、71論文から215の研究事例を抽出し、メタ解析を行った結果、いくつかの傾向が見出されました。

実験デザインに関しては、中程度の時空間スケール(0-10ha・1-10年)の実験で、単位面積当たりの昆虫個体数を評価したものにおいて負の影響が現れやすい傾向でした。対象生物の特性に関しては、昆虫の分類群によらず、家畜による草本の採食を介したものにおいて負の影響が現れやすい傾向でした。これらの結果は、影響の受け手である昆虫の反応は、草食獣や植物の特性によってある程度予測できる一方、実験のデザインによっても影響の見えやすさが異なることを意味します。実際に草食獣の管理を行う時空間スケールでの実験を計画するなど、実験デザインによるバイアスを除いた上での影響評価を行う必要があると考えられます。

 

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