個体群成長率の時空間変動に寄与するキーファクターを検出する
Kaneko, Y & Takada, T. (2014) Pair-wise analyses of the effects of demographic processes, vital rates, and life stages on the spatiotemporal variation in the population dynamics of the riparian tree Aesculus turbinata Blume. Population Ecology 56(1):161-173
様々な環境変動の中で生物集団の存続にとって重要な動態パラメータ(生存率、成長率、繁殖率)や生活史段階は,何だろうか.一連の動態解析及び個体群行列モデルを用いた生命表反応解析から,定量的な比較を試みた.渓畔域の優占種トチノキの事例で,適応度の指標となる個体群成長率の変動について,期間別・立地別の組合せ間でRandomization検定を行ったところ,台風撹乱の有無・繁殖率の高低に起因する有意な変動が検出された.これらの組合せ間で,各生活史段階の各動態パラメータ(図参照)について生命表反応解析を行った結果,台風の有無(図a)・繁殖率の高低(図b)に起因する個体群成長率の変動に寄与する最大の要素は共に,特に初期稚樹段階での成長率であった.また,個体群成長率の変動への寄与度が最も大きい重要な生活史段階は林床の前生稚樹(単軸~分枝型稚樹)であり,一般に長寿命植物で個体群成長率に対して高い感受性を持つ成熟個体が,必ずしも個体群成長率を制御する要素ではないこと等が示された.このような期間別・立地別の組合せ間での一連の動態解析及び生命表反応解析が様々な生存戦略を持つ生物種についてさらに行われていけば,その比較からより詳細な各生物種集団の動態特性が明らかになるであろう.